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ビジネスに使える? 押さえておきたい色彩心理の基本
「色彩心理」と聞いて思い浮かぶのは何でしょうか? 身近なものだと色をテーマにした占いを思い出す人も多いかもしれません。
選んだ色から運勢や性格を占うコンテンツは常に人気がありますよね。当たっても当たらなくても楽しい気持ちにさせてくれるものですが、ここではもう少しシビアに「色彩心理」の活用法を考えてみたいと思います。
例えばマーケティングでは色が消費行動に及ぼす影響は研究対象となり、その効果が期待されています。
よく「赤」は興奮色で購買意欲をそそる色とされているため、セールなどのキャンペーンでも様々なところで多用されていますよね。
このような「赤は売れる効果のある色」という1つの正解をつい求めがちですが、いつどんな場合にも「赤」が有効であるとは限りません。
なぜなら色は単体としてそこにある訳ではなく、周囲の別の色から影響を受けて、見え方や印象が変わってくる場合もあるからです。
他にも形や素材、色を見る環境など、様々な要素と深く影響し合っているため、どんなケースにも有効な色、という意味での正解は存在しないのです。
また、「色彩心理」という分野は現在体系的な学問として確立しておらず、学術的に裏付けされたテータに乏しいという現実もあります。
しかし、こうした中でも様々な調査結果により効果が認められているケースもあります。
ここでは色彩心理の効果として、昔からよく知られているものをいくつかピックアップしてみました。
色の三属性・対比に関する効果
物理的な大きさは変わらないのに、色によって大きく見えたり、逆に小さく見えたり… こうした色の効果を感じたことは誰にでもあるでしょう。
このような色の心理的効果を利用した例と、そのポイントをご紹介します。
重い色と軽い色
〈 過去の事例 〉工場内での積み込み作業の例
商品を自動車に積み込む作業において、黒い箱を使用したところ、作業者の疲労感が増し、気分が優れなくなるケースが多かった。
そこで、専門家の指示により箱を薄い緑色に変えたところ、疲労感が減じて、欠勤者もなくなった。
実際は同じ重さなのに、左側は軽く、右側は重く感じる。
重さ・軽さの感じ方と関係が深いのは色の【明度】
重さ・軽さの感じ方に影響するのは、色の三属性の内の【明度】です。明るい色は軽く、暗い色は重く感じる傾向があります。
色相・彩度の変化による影響はほぼありません。
興奮色と沈静色
配色傾向によって興奮・沈静感を作ることができます。
左の配色は興奮感があり、右の配色は沈静感がある。
【色相】と【彩度】が影響
興奮感や沈静感には【色相】と【彩度】が影響します。傾向としては、暖色系で彩度の高い色は興奮させる効果が、寒色系で彩度の低い色には鎮静効果があるとされています。


寒色系の色は副交感神経を優位にして心身をリラックスさせる効果があるとされています。
一方、暖色系の中でも特に赤は交感神経に影響し、体温や血圧を上げる効果をもたらすという調査結果があります。
こうした色による興奮・沈静効果は、店舗やオフィス、住宅などの室内の色彩設計にも応用されています。
壁や天井など、広い面積に使用される色は特に心身に大きな影響を及ぼす。
進出色と後退色
色の違いによって対象までの距離感に差が生じる場合があります。
左側は中央部分が近づいて見え、右側は遠くにあるように見える。
暖色系は近く、寒色系は遠く見える
距離の感じ方には【色相】が影響します。傾向としては、暖色系の色は近く、寒色系の色は遠くに感じられます。
赤から黄にかけて暖かみを感じる暖色系の色は【進出色】、青緑から青にかけて冷たさを感じる寒色系の色は【後退色】と分類されます。
さらに、同じ色相(赤)でも、明度・彩度が高い方が手前に飛び出して見えます。
左のボタンの方が手前にあるように見える。
膨張色と収縮色
一般的に、着痩せの効果としてよく知られているものです。
同じサイズのT シャツなのに、白に比べて黒はやや小さく見える。
見た目の大きさに影響するのは【明度】
大きさの見え方には【明度】が影響しています。明度が高い色は大きく、低い色は小さく見える傾向があります。
また、上図のT シャツのような無彩色(白・黒・灰)だけでなく、色みのある【有彩色】においても、明度の高い色は膨張して見え、低い色は引き締まった印象になります。
下の2色の文字を見比べてみてください。
左右共に全く同じサイズ(太さも同じ)のフォントを使用していますが、青色に比べると黄色ははやや太く見えます。文字や線など、同じサイズを指定しているはずなのに想定よりも太く、あるいは細く見える場合は、明度に注意して色を調整してみましょう。
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